でろでろ汽水域

読書感想にかこつけた自分語り

退屈ちゃんとストレス

 タイトルを日付&日記にするのはあまりにも芸がないのでやめた。適当な表題をつけることにする。こうして文章にする以上、核になる話題はなにかしらあるものだ。たぶん。なお今日のタイトルは某アーティストの歌詞から。

 

 無職生活、最後の一週間が始まった。来週の月曜日には一年ぶりに社会人の仲間入りである。去年の今頃にはまだ働いていたんだよなあ、と思うと実感が湧かない。ただ、どんな過ごし方をしていたのかはつぶさに思い出せる。例えば午前3時半から4時半に掛けては通勤のために車を運転していた。夏至の頃にだけ朝日の眩しさを運転しながら眺めることができた。午前中は忙しく電卓を叩いていた。昼下がりから夕方までは休憩室や車の中でぐうぐう寝ていた。西日が傾く頃になって再び会社に行き、改めて仕事をした。家に帰れば早くても20時。一杯引っ掛ければ寝る時間だった。休日を楽しみに生きて、休日も午後からは職場に出掛けた。自分でもなにを言っているかわからない。

 アホほど忙しかったが、直属の上司が尊敬できる人だったのが救いだった。見習わなければと思う反面、自分がヘマをしても部長殿(部長だった。超現場型の)が居る限りなんとかしてくれるだろうという甘えもあったように思う。いま思えば申し訳ないことをした。もう少しマシな働きができただろうなと、具体的な反省点や改善点を辞めてから考えられるようになった。でもまあ、いまその職場に戻ったところでそれは実践できないだろう。私の理想を実行するには、上記の通り疲弊しすぎる環境だったのだ。少なくとも私にとっては。

 

 ストレス耐性にはかなり個人差があると思う。基本的な耐久値はもちろんだが(私はかなり打たれ弱い。顔と態度に出る。気をつけたい)どんなストレスをより痛苦として感じるかにも相当な個人差が生じているように思う。

 私の場合は長時間の拘束と、公私混同になる付き合い、相手にイエスと言わせる交渉などがダメだった。つまり前職は非常に相性が悪かったわけだ。逆に集中を求められる細かい作業や計算、形式的な接遇や接待などには比較的強い(と思う)。どうでもいいところでは寒さにも強い。世の中には寒いというだけで機嫌が悪くなる人もいるというのは驚きだった。故郷の秋田では適者生存の結果、全滅した遺伝子だろうから目にする機会がなかったのかもしれない。私としては信じ難いキレ方だと感じたが、当人にとっては寒いのは許せない出来事だったのだろう。本能的な感覚ばかりは想像するのが難しく、歩み寄るのも容易でない。話は全然違うがLGBTへの理解が進まないのもこれが直接的な原因だろうと思っている。感覚的には「霊能力者を信じろ」と言っているのと大差がないのだ。

 話が逸れた。いずれにせよ、ストレス耐性には個人的な差異が大きいので各々、職場や環境がそうした面で過ごしやすいに越したことはないよね、という話である。新しい職場がどんなところかは未知数だが、いずれにせよやっていくしかない。

 ちなみに無職生活は完全にストレスフリーかというとそうでもない。無職だから強く言えないことや、ステータスが負い目になって行けない場所や全力で楽しめないことは多い。そんなの大したストレスではないだろう、と言われてしまえばそれまでであるが常に80点くらいの気分で過ごせるぶん、100点満点の気分にもあんまりならないのは煮え切らない。社会人時代にも満点気分のときなんかなかったな、と思ってしまったらそれまでの話ではあるが。

 

 ストレスに関しては個人の耐久性や精神衛生的な防御力より、いかにたくさんの回復手段を持っているかのほうが重要だと思っている。HPと守備力に優れる〈さまようよろい〉よりも、毎ターン回復魔法を使う〈ホイミスライム〉のほうが現代社会における生存率は高いと思うのだ。

 回復手段は人によって違う。家族や友人に癒される人もいれば、逆にそれが別のベクトルのストレスになる人もいるだろう(かえってそれが毒をもって毒を制すみたいな形で活力になる人もいるみたいだけど、話がややこしくなるので割愛)。私の場合は極めて安易な方法で回復を図っていた。現実逃避である。

 本を読む、音楽を聴く、カラオケに行くなど、現実とは隔離された環境で時間を過ごしながら自然治癒能力によって精神が回復するのに期待する、おそらく一番オーソドックスな方法だ。

 よく運動するとか大きな声を出すなどがストレス発散の候補に上がるが、これらはその行為自体よりも単純にストレスの要因となる環境から極めて離れた状態にあるというだけで、そこに身を置くことさえできれば回復量に大差はないのではなかろうかというのが持論である。

 ならば究極的にはガッツリ寝るのが一番いいはずだが、深い眠りほど体感時間は短くなり疲弊していれば悪夢を見る可能性もある。とりあえず食って寝とけという言説はどこでも見られるが、体験的にはリフレッシュ方法としてはどうかという疑念が残る。やはり能動的に逃げたほうが良いように思う。気楽なのは本を読むことだし、音楽を聴くことになろう。もちろん進んで行動するには疲れすぎている場合もあるし、その場合には寝るのがベストに違いない。最低限の体力を回復してから改めて逃げたら良い。

 あと酒は悪手になる場合が多い。少なくともひとり酒はおすすめできない。飲んでいる最中に多少気持ちよくなったところで、翌日以降素面に戻ったときに疲労と自己嫌悪が襲ってくる。柱になる依存先を別に拵えておき、そこに没入する際にエッセンス程度に摂取するのがアルコールとのうまい付き合い方だろう。

 

 とりとめがなくなってきた。なんにせよ、様々なストレスを様々に逃しながら生き抜いてやるぞ、と思っている。しばらくは気が張っているから元気だろうが、夏頃からがアブナイ予感がする。いまから構えても仕方のないことなので、まずは新生活を楽しみにしようと思う。