最近ブログを更新していないのは「艦隊これくしょん」にハマっているからだ。なかなかどうして面白い。とうとう課金要素にまで手を出してしまった。
今夜はその「艦これ」がメンテナンス開けということもあり、サーバがやたら込み合っているという噂なので遊ばないことにした。代わりに思ったことをこちらに書く。
簡単に紹介させていただくが「艦隊これくしょん」は、第二次世界大戦初期から終戦時にかけて活躍した旧日本軍の海軍艦隊所属の実在する戦闘用船舶を、可愛らしい美少女キャラに擬人化。プレイヤーは艦隊の提督となり、それら美少女たちを収集・育成しながら海の脅威である深海棲生物と戦っていくミリタリー・シミュレーションゲームである。
改めて文章に起こすと凄い。気が狂っている。戦国武将を美少女化した作品や、欧州各国を擬人化した作品は目にしたが、大日本帝国の軍用船舶という極めてニッチな物を擬人化したのは相当奇抜な選択だったと言えよう。
しかし、いわゆるミリタリーと美少女の組み合わせ自体は決して目新しいアイディアではない。バカでかい武器を振り回す華奢な少女という絵面はむしろ手垢だらけのキャラクターであるし、最近のアニメではそれこそ戦闘機や戦車に乗ったり戦ったりする少女を主体とした作品がヒットしている。
…らしい。漫画アニメ関連は概要しか知らないので断言はできないが、少なくとも軍事&美少女は最近よくある組み合わせだろう。
ただ、軍用装備をそのまま擬人化した作品、となるとやはり珍しいのではないだろうか。無機物をそのまま擬人化という試み自体かなり希有な例だろうし、アイディア的にたぶんギャグ路線になってしまう。
「艦これ」に登場するキャラクターは「戦艦そのもの」である。艦長や乗組員ではなく船そのものだ。誰でも知っている戦艦大和は「大和」というひとりのキャラクターとして登場する(最近配信された)。
その他のキャラも海軍よろしくセーラーや軍服、何故か弓道着や巫女服みたいのを身に纏った少女が、同時に肩や腕にいかつい砲塔を装備している。これは実際のグラフィックを見てもらった方が説明が早い。興味深いのはミリタリーに対する比重がかなり大きめにキャラクターデザインが施されている点だろう。
先に挙げたような武装少女系のキャラクターは「少女」の存在が第一にあり、それに付随する武器や兵器は半ばファンタジーの存在であることが多かった。
例えばリボルバー式の拳銃から薬莢が飛び出したり、刺突剣で薙ぎ払ったり、酸素マスクや圧縮スーツ無しで戦闘機を飛ばしたり、概念として軍事は取り入れながらその具体的構成や現実性はないがしろにされてきた。
が。「艦これ」はミリタリーオタクがニヤリとするような要素をちりばめたデザインが徹底されている。実在艦船の名前を借りるに辺り、史実や実際の兵装から見た目や性格までが考え抜かれている。
少女が手にする砲塔や魚雷は実際の物に近い造形で書き込まれているし、不遇な運命を辿った船はそれがトラウマになっていたりする。発注を受けたデザイナーさんはさぞ苦戦したことと思う。苦心の成果もあって、どのキャラクターも可愛らしく、勇ましい。
まだ一週間程度しか遊んでいないが、やはり収集と育成は単純作業でもクセになる。少しずつステータスを上げ、新しいステージに駒を進めていくのは楽しい。100種類以上のキャラクターが存在するため収集だけでもなかなか歯ごたえがある。
運営の仕事も見事だ。話題が沸騰し、ユーザーがひと月の間に倍になったにも関わらず(今月初めは30万人に満たなかった登録者数が、今日現在で60万人を超えた)サービスを止めることなく、新規プレイヤーにも制限付きながら順次登録を解放している。
サーバに掛かる負担やメール相談等雑多な作業もそれに伴って増えるだろうし、スタッフは相当な苦労をしているはずである。今更だが、このゲームは無料で遊ぶことができる上に「課金によってしか入手できないレア」や「プレイヤー同士のトレード」などが存在しないため、既存のゲームに比べて課金要素が極めて低い。つまりユーザーの増加が利益に繋がりにくいのだが、サービスは丁寧で上手いところを突いている。
例えば、エラーやメンテナンスでユーザーに負担を掛ける際には、可愛らしい一枚絵を用意する。これだけでユーザーが受けるストレスはかなり違う(ようだ。僕はまだエラーに遭遇していない)。Twitterの公式アカウントは毎日イベントやメンテナンス情報を呼びかけているし、その呼びかけ方も親しみやすさを保ちつつ、緩くなりすぎず丁寧に客商売をしている。かなり訓練されている印象を受ける。
ブラウザゲームもギャルゲーも本腰を入れて遊ぶのは初めてだが、今のところとても楽しく遊べている。
最後になるが、個人的に「艦これ」で一番気に入っているのは、根底に寂寥感があるところだ。
当たり前だが、第二次世界大戦で日本は負けた。ミッドウェーやレイテ沖海戦を経て本土進行を許した日本軍の艦船がどのような末路を辿ったのか、それはここで説明するまでもなく想像のつくことだろう。その多くは文字通り海の藻屑と消えたのだ。
そうした一抹の悲しさが、どんなに可愛らしいキャラクターに姿を変えても何処かに感ぜられるし、そういう風にデザインされているように思われる。そうしたゲームの作り方にとても好感が持てる。
二次元キャラというのは死や老いと無縁の存在であることが何よりも優れた機能のひとつであるが、「艦これ」のキャラクターは負けたり死んだり悲しかったりするものから生まれた存在である。このちょっとした重さがとても良いバランスを取って心に馴染んでいる。
少し大戦中の勉強もしたいな、と思いながら「艦これ」を遊ぶ日々が、もうしばらくは続きそうである。読みたい本も、感想を書きたい本も増えてしまったがなんとも時間が足りない。困った。