でろでろ汽水域

読書感想にかこつけた自分語り

bumper stickers を見においでよ

このブログで自分の公演の振り返りはずいぶんやってきたが、これから本番を迎える舞台について書くのは初めてだ。 言いたいことは表題のとおりである。2月18日16時開演の bumper stickers ダンス公演『FRee Way』をぜひぜひ観に来ていただきたい。ダンスに興…

劇団ウィルパワー『雨音協奏曲』/うさぎストライプ『あたらしい朝』感想

ミュージカルでご縁ができた仲間たちを通じて「こんなイベントがあるよー」とか「こういう公演に出るよー」といった情報がいち早くお届けされるため、秋田県内の舞台で展開する面白そうなコンテンツは見落としようがないのだが(ありがとうございます)さす…

ゆく年くる年2023

2023年は自分の人生においてもっともカラフルな一年だったと言っても過言ではないと思う。シゴト以外のことで週末の予定が次々に埋まり、週・月・シーズンごとにやるべきことや目標が定められ、それに向かって緊張感を持ちつつも楽しみながら挑むことができ…

けやはす演劇部公演『田村さんと・村田さん』に出演した話

恒例になってきた公演後の長文感想はっじまーるよー。 今回は約12,000字書いた。ちなみに世間一般で短編小説に分類されるものがだいたい2〜4万字と言われている(諸説あります)。もちろん、ただだらだら書き殴っていくだけのブログの文字数と入念な推敲を…

ミュージカル『アラジン&CATSハイライトメドレー』に出演して

今年の夏はとにかく暑い。ほとんどの秋田県民にとって、今年は水害と猛暑の年として深く記憶されることになるのだろう、とこれは私個人の願望でもある。こんな酷暑やら自然災害やらは、ごく稀に発生する「珍しいもの」であってもらいたい。先の心配をしても…

良いニュースと悪いニュース

むかしインターネットで見かけた小話にこんなものがあった。 家族が帰宅するなりこう言う「良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞きたい?」。「じゃあ良いニュースかな」と返事。それに対する答えはこうだ。「車のエアバッグは、きちんと…

県民市民参加型ミュージカル『欅の記憶・蓮のトキメキ』に出演して

昨年の3月に初めて稽古に顔を出してから、正確には「最初の稽古でこの曲を歌ってもらうので練習してきてください」という課題曲付きのメールを受け取ってからの約10か月、生活の片隅にはいつもミュージカルがあった。職場への道中は劇中歌を聴き、寝る前に…

『麒麟がくる』に失望した話

久々にブログで「記事作成」をクリックした。やっほー、いわしだよ。 いま私の心は千々に乱れている。 というのも、先ほど最終回を視聴した『麒麟がくる』のラストがあまりにもダメダメだったからだ。久々に、本当に心の底からがっかりしている。10年くらい…

読書感想:『ヒトラー演説 熱狂の真実』高田博行

Twitterで某アカウントが突然おすすめしていたのがツボにハマって買ってしまった本。普段は小室哲哉氏をネタにしたキチ○イなツイートばかりしているのだが、一方で時折さらりと含まれる語彙や比喩には高い知性が隠しきれていない奇妙な御仁である。なんらか…

読書感想:『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』高橋ユキ

久しぶりの読書感想。この本を読み終えたのは少し前で、読んだ直後に感想を半分ほど書いたまま放置していた。たまにある「つらつら書いてきたけど、こんな感想だったかしら」という自分に嘘をついているような疑念がふつふつと湧いてきて、文章を続けるのが…

2020年の年明けによせて

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 いま? と思われた貴方は実に正しい。1ヶ月と1日遅い。そんなことは十分承知している。なんやかやと忙しくしているうちにあっという間に経過してしまった。恐ろしい。 このご時世、…

2019年振り返り

今年も残すところ僅かとなったので、備忘録も兼ねた振り返りをひとつ。 ざっくりと振り返ると、思うように行かないことが多い一年だったと思う。昨年までの数年間は順調だと感じることが多かったので、ここいらで停滞と我慢の年がやってくるのは巡りあわせと…

ミステリー小説の推理メモ:『女王国の城』有栖川有栖

ここしばらく、標題の小説に首っぴきになっている。解決編の手前まで読み、そこまで行ったら最初から読み直す、という珍妙な読み方を繰り返しているのだが(もちろん事件の真相を自力で究明したいからだ)、ふと「道中に推理していたことを書き残しておいて…

読書感想:『インド倶楽部の謎』有栖川有栖

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 久しぶりに購入した講談社ノベルス。著者の作品における「国名シリーズ」の第9弾は、待ちに待った長編小説である。 前世からいまの自分に至るまで、その運命のすべてが記録されているというインドの神…

読書感想:『本と鍵の季節』米澤穂信

昨年末に発売となった米澤穂信の新刊。図書委員に所属する高校2年生の主人公とその友人のコンビが、図書室を発端とする様々なミステリーに挑んでいく作品。設定こそ著者の大ヒット作であり代名詞とも言える〈古典部シリーズ〉を彷彿とさせるが、読み始める…

有栖川有栖の著作感想

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 新年一発目の更新ですが、年末からちくちく書き足してきたやつなので新鮮味がない。 最近、有栖川有栖の作品にハマっており、暇さえあれば著作の消化に没頭している。大学生の頃に森博嗣にハ…

読書感想:『双子は驢馬に跨がって』金子薫

お久しぶり。いわしだよ。 10月の頭からとにかく仕事が忙しく、読書どころかPCを開くことはおろかスマホのゲームも満足に遊べないような生活を送っていた。今月の上旬でその大きな仕事も終わり、いまは思い出したように酒を飲んだり本を読んだりしている。不…

読書感想:『迷宮百年の睡魔』森博嗣

大学時代に『すべてがFになる』を読んで衝撃を受け、そのまま既刊を買い漁って講義中に読み耽り(大学生時代が一番本を読んだ。主に講義中に)新作が出れば徹夜して読破するほど一時は熱を上げていた森博嗣。 しかし、刊行される作品から次第にミステリー色…

読書感想:『鍵の掛かった男』有栖川有栖

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 日本ミステリー界の巨匠が放つ長編作品。最高傑作との評価も聞こえるだけあって、さすがに面白かった。大満足の作品である。それゆえ、そんなに書くことがない。それでいいのか、私の読書感想。 ちなみ…

読書感想:『異人たちの館』折原一

書店にて「掘り出し物」を謳うポップがついていたのが気になって購入した作品。 読んでみたらどうということはなく、あんまり面白くないから百凡に埋もれていったんでしょうな、で納得してしまう作品だった。掘り出し物というよりは、出土品である。掘ったら…

読書感想:『その可能性はすでに考えた』井上真偽

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 書店で見掛けた文庫本のタイトルと装丁が綺麗で、思わず手に取った作品。 読み始めてみると文体が軟派で肩透かし。どっこい、読み進めるとかなり骨太な構成となっており二度びっくりの侮れない作風だっ…

読書感想:『盤上の向日葵』柚月裕子

2018年の本屋大賞2位。先日感想を(勿体ぶりながら)書いた『屍人荘の殺人』が同賞3位だったが、確かにそれに比べると作りが格式高いというか、完成度に隙がないように感じられた。 一方で個人的には枠にきっちり収まりすぎていて面白味を欠いているような…

読書感想:『残穢』小野不由美

暑い夏を乗り切るべく、涼を求めて購入した一冊。たまに目にする評判によると、とにかく怖いらしい。 私の尊敬している文筆家の方が、長嶋有の『三の隣は五号室』を「幽霊の出てこない『残穢』」と評しているのを見た頃から気になっていたものの、ホラー小説…

読書感想:『自動車会社が消える日』井上久男

世界的な販売台数と業績から見れば、一見好調とも思える日本の自動車産業界に警鐘を鳴らす一冊。ぎょっとさせるタイトルながら、内容はそこまで批判的なわけではない。世界のライバルに比べて日本の各メーカーがどのように遅れているのか、またどのような挽…

読書感想:『ラプラスの魔女』東野圭吾

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 温泉地で立て続けに起きた硫化水素の中毒事故。事故現場の調査を依頼された研究者は、事故現場で不思議な少女と出会う。不幸な偶然が重なった結果としか考えられない〈事故〉の背景に隠された真相とは…

読書感想:『屍人荘の殺人』今村昌弘

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。犯人やトリックのネタバレはありませんが、本作の〈構成の妙〉について触れており、犯人のネタバレに匹敵するレベルで初読の醍醐味を損ないます。本作を新鮮な気持ちで楽しみたい方は感想を一切読まない…

読書感想:『プーチンのユートピア』ピーター・ポマランツェフ

訳者は池田年穂。著者はロシア系イギリス人のTVプロデューサー兼ジャーナリストであり、ソ連で生まれるも幼少期に一家で亡命し、イギリスで大学卒業までを過ごす経緯を持っている。その後ロシアに渡り、TV局の仕事を通じて出会った人々や遭遇した事件につい…

読書感想:『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』大澤真幸

宇野常寛の社会評論を読んでいる際、ときどき引用や言及が及んでいたのでなんとなく名前を覚えていた作家。先日本屋をふらついていたところ本書を発見し、タイトルからも『母性のディストピア』や『リトル・ピープルの時代』と地続きな印象を受けたので購入…

読書感想:『生き方の問題』乗代雄介

現在発売中の『群像』6月号に掲載。 先日べた褒めした『美しい顔』も同じ雑誌に載っているのだが、これはちょっとした奇跡である。本作の著者、乗代雄介氏も3年前に第58回群像新人文学賞を受賞していることもそうであるし、なにより両方の作品が揃って抜群…

読書感想:『美しい顔』北条裕子

今年の群像新人文学賞受賞作品。現在発売中の『群像』6月号に掲載されている。 私が断言してもどうしようもないが、次の芥川賞を獲ると思う。圧倒的だった。 「芥川賞を獲る」が最大級の賛辞としてぺろりと出てきてしまう自分の単純さがときどき厭になる。…