でろでろ汽水域

読書感想にかこつけた自分語り

2018-01-01から1年間の記事一覧

読書感想:『双子は驢馬に跨がって』金子薫

お久しぶり。いわしだよ。 10月の頭からとにかく仕事が忙しく、読書どころかPCを開くことはおろかスマホのゲームも満足に遊べないような生活を送っていた。今月の上旬でその大きな仕事も終わり、いまは思い出したように酒を飲んだり本を読んだりしている。不…

読書感想:『迷宮百年の睡魔』森博嗣

大学時代に『すべてがFになる』を読んで衝撃を受け、そのまま既刊を買い漁って講義中に読み耽り(大学生時代が一番本を読んだ。主に講義中に)新作が出れば徹夜して読破するほど一時は熱を上げていた森博嗣。 しかし、刊行される作品から次第にミステリー色…

読書感想:『鍵の掛かった男』有栖川有栖

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 日本ミステリー界の巨匠が放つ長編作品。最高傑作との評価も聞こえるだけあって、さすがに面白かった。大満足の作品である。それゆえ、そんなに書くことがない。それでいいのか、私の読書感想。 ちなみ…

読書感想:『異人たちの館』折原一

書店にて「掘り出し物」を謳うポップがついていたのが気になって購入した作品。 読んでみたらどうということはなく、あんまり面白くないから百凡に埋もれていったんでしょうな、で納得してしまう作品だった。掘り出し物というよりは、出土品である。掘ったら…

読書感想:『その可能性はすでに考えた』井上真偽

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 書店で見掛けた文庫本のタイトルと装丁が綺麗で、思わず手に取った作品。 読み始めてみると文体が軟派で肩透かし。どっこい、読み進めるとかなり骨太な構成となっており二度びっくりの侮れない作風だっ…

読書感想:『盤上の向日葵』柚月裕子

2018年の本屋大賞2位。先日感想を(勿体ぶりながら)書いた『屍人荘の殺人』が同賞3位だったが、確かにそれに比べると作りが格式高いというか、完成度に隙がないように感じられた。 一方で個人的には枠にきっちり収まりすぎていて面白味を欠いているような…

読書感想:『残穢』小野不由美

暑い夏を乗り切るべく、涼を求めて購入した一冊。たまに目にする評判によると、とにかく怖いらしい。 私の尊敬している文筆家の方が、長嶋有の『三の隣は五号室』を「幽霊の出てこない『残穢』」と評しているのを見た頃から気になっていたものの、ホラー小説…

読書感想:『自動車会社が消える日』井上久男

世界的な販売台数と業績から見れば、一見好調とも思える日本の自動車産業界に警鐘を鳴らす一冊。ぎょっとさせるタイトルながら、内容はそこまで批判的なわけではない。世界のライバルに比べて日本の各メーカーがどのように遅れているのか、またどのような挽…

読書感想:『ラプラスの魔女』東野圭吾

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。 温泉地で立て続けに起きた硫化水素の中毒事故。事故現場の調査を依頼された研究者は、事故現場で不思議な少女と出会う。不幸な偶然が重なった結果としか考えられない〈事故〉の背景に隠された真相とは…

読書感想:『屍人荘の殺人』今村昌弘

※以下、ミステリー作品の内容に関する言及があります。犯人やトリックのネタバレはありませんが、本作の〈構成の妙〉について触れており、犯人のネタバレに匹敵するレベルで初読の醍醐味を損ないます。本作を新鮮な気持ちで楽しみたい方は感想を一切読まない…

読書感想:『プーチンのユートピア』ピーター・ポマランツェフ

訳者は池田年穂。著者はロシア系イギリス人のTVプロデューサー兼ジャーナリストであり、ソ連で生まれるも幼少期に一家で亡命し、イギリスで大学卒業までを過ごす経緯を持っている。その後ロシアに渡り、TV局の仕事を通じて出会った人々や遭遇した事件につい…

読書感想:『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』大澤真幸

宇野常寛の社会評論を読んでいる際、ときどき引用や言及が及んでいたのでなんとなく名前を覚えていた作家。先日本屋をふらついていたところ本書を発見し、タイトルからも『母性のディストピア』や『リトル・ピープルの時代』と地続きな印象を受けたので購入…

読書感想:『生き方の問題』乗代雄介

現在発売中の『群像』6月号に掲載。 先日べた褒めした『美しい顔』も同じ雑誌に載っているのだが、これはちょっとした奇跡である。本作の著者、乗代雄介氏も3年前に第58回群像新人文学賞を受賞していることもそうであるし、なにより両方の作品が揃って抜群…

読書感想:『美しい顔』北条裕子

今年の群像新人文学賞受賞作品。現在発売中の『群像』6月号に掲載されている。 私が断言してもどうしようもないが、次の芥川賞を獲ると思う。圧倒的だった。 「芥川賞を獲る」が最大級の賛辞としてぺろりと出てきてしまう自分の単純さがときどき厭になる。…

弘前に行った日記(4月21、22日)

社会復帰を果たして間もなくひと月が経つ。想像していたよりは忙しい日々を過ごしてはいるが(7時に家を出て帰ってくると21時過ぎ)、身体的・精神的な負担に限れば心配のほとんどは「杞憂であった」という表現に終始する程度には順調である。丸1年ヒマ…

読書感想:『戦争における「人殺し」の心理学』デーヴ・グロスマン

久々の読書感想。本自体は読んでいるが最近は知識のバックボーンを拵えるのに汲々としていて『おとなの学習』シリーズから『日本史・世界史のおさらい』とかW・H・マクニールの『世界史』などを読んでおり、いかんせん読書感想が書きづらい。これから書こう…

子曰く「ネクタイは首輪、腕時計は手枷」(嘘)

読書感想は週一くらいで書いていきたい。プライベートで落ち着いて読む時間はなくなったが、電車通勤になったので移動中や待ち時間に本を眺める機会は増えた。逆にあれだけ触っていたスマホゲームにまったく食指が伸びなくなった。不思議である。 社会人にな…

さらばアドリア海の自由と放埓の日々よ、ってワケだ

『紅の豚』の主人公、ポルコ・ロッソの小洒落た会話。このセリフのあと、酒を舐めている老人から「それバイロンかい?」と尋ねられ「いや、俺だよ」と返すのが格好いい。 なんとなくの雰囲気だけで、この会話の趣旨を理解できていないジブリファンは少なくな…

読書感想:『公文書問題 日本の「闇」の核心』瀬畑源

すっかり人気番組と化した国会中継を眺めていて、なにか参考になる本が欲しいなと思っていたところで見掛けて購入した本。こうした本はなんと言っても鮮度が重要であり、いまがまさに食べ頃である。ここ数ヶ月が旬だと思うので暇な人は本屋に走るかAmazonで…

ヒソヒソ・イマージェンシー

学校が春休みになったせいか、図書館には小・中学生くらいの学生が目立つ。私がそのくらいの年代だった頃には、図書館で勉強しようなどという殊勝な気持ちになったことはなかった。もっとも、参考図書が必要な訳でもなければ冷房の恩恵に預かれる夏場とも違…

秋田県民と県民歌

秋田では県民歌を耳にする機会が多い。私が高校卒業と共に故郷を離れたときには「式典でときどき聴いた覚えがあるなあ」程度だったと思うのだが、15年の間になにがあったのだろう。単に私が鈍感だっただけで昔からそこかしこで歌われていたのだろうか。経…

退屈ちゃんとストレス

タイトルを日付&日記にするのはあまりにも芸がないのでやめた。適当な表題をつけることにする。こうして文章にする以上、核になる話題はなにかしらあるものだ。たぶん。なお今日のタイトルは某アーティストの歌詞から。 無職生活、最後の一週間が始まった。…

手帳を買った

電車の接続時間を待つあいだ、本屋をぶらぶらしていたら手帳の特設コーナーを発見した。以前の職場では会議や出張はあったものの、多くても月に数回、運悪く集中して週に2回程度だったのでタスク管理はさほど必要がなかった。それでも格好付けたくて何年か…

問題文の外にある問題の存在

昨晩、テレビで『相棒』の劇場版4が放送されていたのを、母親と一緒に居間で見ていた。いまでこそニュースとスポーツ中継以外の視聴を意識的に避けるレベルのテレビ嫌いを発症している私だが、少年時代はアニメとバラエティをこよなく愛し、観るべき番組が…

読書感想:『21世紀の楕円幻想論』平川克美

久々の読書感想だが読書自体は順調に続けており、ここ最近は図書館で毎日2、3冊は読んでいる。ただ大半が来月からの仕事に関するものなので、ここに感想を書くのはどうかと思って控えている。なにより雇用先から紹介されたリストに乗っ取って読んでいるの…

3月19日の日記

夕方のニュースを見ていると桜が咲いたという報告が相次いでいる。いち早く咲いた高知に至っては満開のところもあるようだ。今年はおそらく東北や北海道でも例年より早い見頃を迎えることだろう。北の桜は例年通りの桜前線であれば見頃がちょうどGWに差し掛…

移行期間

今週はあっという間に平日が終わってしまった。日がな一日家にいるのと、外に出るのとでは時間に対する感覚が違ってくるらしい。家で本を読むのと外で本を読むのとでそこまで違うだろうかという気もするが、もう週末かと感じるのは久々な気がする。 よくよく…

初めての図書館

いよいよ無職生活も残すところ半月となった。 先月、採用予定の職場から「4月から一緒に頑張ろうね!」という内容の、A3の厚紙を二つ折りにした簡素なパンフレット(?)が届いた。新卒の方々に送付されているのと同じ物であるらしく、社会人になるにあたっ…

読書感想:『キラキラ共和国』小川糸

一晩時間を置いたら昨日の読書感想を書き損ねた理由がわかった。単純に内容を理解できていなかった。典型的な、下手の考え休むに似たり、というやつだ。わからなかったことに対しては素直に「わかりません」というか、わかるように調べるか勉強するしかない…

3月13日の日記

いつものように読書感想を書いていたのだが、はたと手が止まり「なんだか嘘っぽいことを書いてるな」という引っ掛かりがあったきり筆が進まなくなってしまった。それなりに面白く読んだし、テーマも漠然とながら輪郭は見えていたので書いているうちに形にな…