でろでろ汽水域

読書感想にかこつけた自分語り

オカルトの話

大学生時代、まだ2ちゃんねるが盛況だった頃に「オカルト板」で不気味な話を見るのを秘かな楽しみにしていた。ちょっと怪奇スポットに行ってみる、不思議な体験をしたんだが、あの場所でこんな事件が…、と言った9割9分が嘘とわかっていて、それでも少しずつ上がってくるレスや粗い画素の写真、周りの反応などで自分の想像力をくすぐって楽しんでいた。いま纏めサイトなどで傑作として残されているものには、いくつかリアルタイムでスレを追っていたものもある。

スレッドを立てた主が最後まできちんとオチを付けて終わることも少なく、周りで茶化している側が主役となって話が脱線してうやむやになることも多かった。それでもその空気が百物語に集まった有象無象という感じで楽しさに拍車を掛けていた。

幼少の頃、矢追純一のUFOスペシャルが好きだった。ミステリーサークルやUMA、怪奇心霊番組が流行っていた世代でもあった。UFOスペシャルなどはいま YouTube で見直すと構成も理論もガタガタで「バカにしてんのか」と言いたくなる代物だが、当時の私は「これが科学の最先端…」と固唾を飲んで番組を見守っていた。月の裏側にリトルグレイの秘密基地があると信じていた。

私の心をがっちり掴んでいたオカルトの握力にやや陰りが見えたのが、ミステリーサークルを作っていたのが二人組の爺さんであることがわかったときだった。心霊怪奇スペシャルもオーブだのラップ音だの派手さの無い映像に終始することが多くなった。やらせでも腕や髑髏がギャガーンと現れたほうが良かった。多感な少年を素敵に騙していて欲しかった。

さてオカルト。いま私がどのくらい信じているかというと、宇宙人は信じていない。UFOはいわゆる宇宙人の乗り物ではないだろうけど謎現象はあるっぽいと思っている。幽霊は信じたい人の中にだけ強烈に姿を現わす幻覚症状。UMAはジャッカロープが好き。平たく言えばグダグダだ。どうでもいい。

ただあの世の話や不気味な話は好きだ。それらはなんだかんだでイノセントな世界の話である。

老いた両親の介護とか、自分の年金とか、物騒な隣国とか、今後のエネルギーインフラ含めた社会情勢とかに比べると楽しめる行儀のいいホラーでしかない。たとえ拉致されて金属片を埋め込まれたり、冷たい手が足首を掴んできたとしてもそんなの些細な出来事のような気がする。酒の肴だそんなもん。

自分が畳の上で死ねるとは思っていないが、十分に平和な世の中で最後を迎えられて幽霊になれたら、たぶん出歯亀に精を出すと思う。思うけどどうなんだろう。生殖機能がゼロになるわけだから煩悩も消えるんだろうか。だとしたら真理に近づけるのは死後だろう。

なんかゲスい内容になってしまったが、心霊写真系のゾクゾク感は他に味わいようが無くて良い。いまは真冬なのであまり気が進まないが。