でろでろ汽水域

読書感想にかこつけた自分語り

秋田県民とシンカーの話

ここで言うシンカーというのは、野球でピッチャーが投げる変化球のシンカーのことである。

スライダーやカーブが利き手とは逆の方向へ変化するのに対し、シンカーは利き手側に曲がり、その名の通り鋭く沈む。腕を振り下ろす動きと逆のモーメントで手首や指先を使わねばならず、一般的に先に上げた変化球よりも習得は難しいとされる。一方でサイドやアンダースローでは握りひとつで簡単にシンカー軌道のボールが投げられるため、低いフォームの投手は決め球として投げる場合が多い。

このシンカー。何故か秋田県出身のプロ野球選手には投げる人が多い。

「秋田出身の投手はシンカーを投げる決まりでもあるのか?」と訊かれるほど多い。ちょっと実例を挙げて確認してみよう。

まず何と言っても最初に紹介しなければならないのは、日本プロ野球界最高のサブマリンと称される山田久志投手だ。プロ通算284勝は通算勝利数歴代7位の大記録である。秋田県能代市出身。秋田が、特に能代市が誇る名選手である。

その偉業はいまも語り継がれており、能代球場は「山田久志サブマリンスタジアム」の愛称で親しまれている。これにちなみ能代市民はアンダースローでキャッチボールをする(嘘)。

古い野球ファンはアンダースロー、シンカーと言えば山田久志が出てくるだろう。私くらいの年齢だとヤクルトの高津、西武潮崎がシンカーのイメージだが、なんといってもシンカーと言えば山田久志である。パワプロ2014でもOBとして選手登場し、変化球の高速シンカーは変化量マックスである。

続いては私が応援しているヤクルトスワローズ石川雅規投手。おお、MacBookが「いしかわまさのり」を完璧に漢字変換した。偉いぞ。

秋田県秋田市出身。すでに10年以上ヤクルト左のエースとして頑張っている。怪我人の多いヤクルトには珍しい頑丈な選手で、安定した活躍ぶりにはファン内外を問わず評価する声が多い。170cmに満たない小柄な体格ながらチームに与える安心感は他の選手とは比べものにならない。

石川投手はこじんまりとした体格もあって平均球速がプロ選手の中では最も遅い部類に入る。それでも長年エースとして活躍できたのは巧みなコントロールとシンカーを始めとする多彩な変化球の存在あってこそだ。山田投手とは違い上投げからのシンカーは緩急の要として石川投手の生命線となっている。

そして私がヤクルトファンでなければ山田久志の次に登場していたであろう、ホークスのエース摂津正投手。秋田県秋田市出身。

日本シリーズでの登板やWBCでの好投もあるのでおそらく現状一番知名度がある選手。プロ入り後、中継ぎとして活躍してから先発投手へ転向、そこからも沢村賞を受賞するなどパワプロのマイライフを現実にやっている投手と言われることもある。

摂津投手もやはり決め球はシンカー。テークバックの小さい上投げからのシンカーを武器とし、特に三振を取りに行くシンカーはフォークボールのように縦に鋭く落ちる。

今年は終盤にそのシンカーを痛打される場面が目立ち、エースとしては頼りない投球が続いてしまった。しかし守備妨害で終了したのが記憶に新しい日本シリーズ第5戦では無失点で後続に繋ぐピッチングを見せた。来季の巻き返しに期待がかかる。

とまあ秋田県出身投手でシンカーが武器の投手はこんな感じだ。3人しかいないじゃねーかという声が聞こえてきそうだが、3人も偉大な投手がぽっと出てくるのが異常である。

しかも冒頭に書いた通り、シンカーを武器とする投手は下手投げの場合が多いのだが、ここでは3人中2人が上手投げにも関わらずシンカーを伝家の宝刀として活躍している。これは最早偶然では説明がつかない(強引)。

wikiを見たらもっと秋田出身の投手が見つかるかもしれないが、私がwikiで探さなきゃ見つからないような投手ならたぶん大した選手ではあるまい。そもそも、元々人口の少ない県でありスポーツに特別熱心なわけでもないので、そんなにプロ野球選手が多いわけではない。他に秋田出身の投手で有名だったのはタイガースに入団した藤田太陽投手、ジャイアンツの小野仁投手あたりだが、やはりシンカーを投げられなかったせいか期待通りの活躍はできないまま引退している。

ここまで書くのでもう疲れたので乱暴に纏めて締めるが、秋田に生まれてプロ野球の世界で投手としてやっていくつもりなら、シンカーは覚えた方がいい。出世率が違う。というわけで石山投手はシンカー覚えよう。