でろでろ汽水域

読書感想にかこつけた自分語り

読書感想:『鼻』曽根圭介

「昨日『百年泥』の感想だったのに『おらおらでひとりいぐも』の感想じゃないんかい!」というツッコミがありそうだが、私は同時平行的に数冊の本を読むタイプなので傾向がブレる。歴史や評論、経済など少し堅めな本を一冊、それに疲れたときに息抜きになり…

読書感想:『百年泥』石井遊佳

言わずと知れた第158回芥川賞受賞作。今回は受賞者がふたり、そして両者とも作家としてはそれほど若くない(という言い方に留めておこう)ことも話題となった。読書が趣味、を名乗る身としては芥川賞と直木三十五賞の受賞作くらいは読んでおかなくてはな…

読書感想:『オーパーツ 死を招く至宝』蒼井碧

単刀直入に言うとミステリーとしてもエンタメとしてもガッカリな出来だと感じているので、読んでいて気持ちのいい感想文にはならないだろう。ご容赦を。 あまり面白くなかったとはいえ、ぶらりと立ち寄った本屋で平積みになっているのを見掛けてタイトルの絶…

読書感想:『いま世界の哲学者が考えていること』岡本裕一朗

以前から哲学については興味を持っていたのだが、それに対して暗記科目以上のアプローチができるようになったのはごく最近のことだ。高校倫理でソクラテスから始まる一通りの流れは学習しているはずなのだが、代表的な哲学者の名前と思想の表題に触れる程度…

読書感想:『真実の10メートル手前』米澤穂信

ずいぶん前にミステリーのベストセラーを特集した棚で見つけ、タイトルが気に入って購入した作品。衝動買いした本の宿命として積ん読の山に一度埋没したが『氷菓』をたまたま読んだことから「著者が一緒だ」と気が付いて発掘。しかし作品の時系列として先日…

読書感想:『どちらかが彼女を殺した』東野圭吾

※以下、ミステリー作品の内容、作品の核心に触れる記述があります。 ミステリー小説は解決編の前に読者自身でしっかりと推理をしてから読んだら(読みながらの“ながら推理”はほとんどの読者がしていると思うが、もっと本格的なやつ)最高に面白いのではない…

読書感想:『さよなら妖精』米澤穂信

米澤穂信の作品は『氷菓』から読み始めた。シリーズを通じて生き生きと描写される、学生生活におけるポテンシャルとしての熱量と個々人が抱える気怠さの対比。そして、ミステリアスでありながらどこか生活感や手癖のような日常の気配が色濃く見える謎の存在…

読書感想:『死にたい夜にかぎって』爪切男

ついに発刊となった爪切男さんの処女作。過去の同人誌や日刊SPA!の連載で実力は折り紙付きであったが、それだけに一冊の本でなにを語るのかは書籍化決定当初から気になっていた。だからTwitterでタイトルが発表された際には少し驚いた。これまでの直接的で…

読書感想:『銀河鉄道の父』門井慶喜

詩人、宮沢賢治の生涯を、その実父である政次郎の視点から描いていく作品。途中からは賢治の目線も加わるが、主役は本題の通り〈父〉にある。 読み終えてまず思ったのは、どこまでが事実でどこからが物語なのか、ということだった。途中で何度か「これ伝記じ…

読書感想:『ここは、おしまいの地』こだま

衝撃のデビュー作から1年、待望の新作。Quick Japanで連載中のエッセイを加筆修正しての発刊となった今作は、著者の(主に苦い)経験を“いま”に軸足を置いて語られる。前作がすでにそうだったのだが、今作も重い・辛い・苦しいの三重苦。いや、クサいもある…

いった年きた年

新年を迎えてから早いもので一週間が経過した。四十九日は明けたとはいえ喪中の身であるので新春の挨拶は控えさせていただくが、今年も何卒よろしくお願いいたします。 昨年は大学卒業以来、久しぶりに暇を持て余した一年だった。仕事を辞めて四月に実家に帰…

今年読んだ本

無職になったので年間百冊くらいは読みたいと思っていたがその半分も行かなかった。以前読み終えた本を再読したりというのも5冊程度なので、読書が趣味と公言するのは憚られる読了数であることは否めない。なお読みかけの本が十冊ほどあるが大半は講談社学…

文学フリマ『自分探しの旅は短パンで』の感想

昨日の続き。 表題の作品を出展したのはイチ・ニイ・イチ、というサークル名だが、構成人員である長尾パンダ、村主、せきしろ、の名前を出したほうが世間的にはピンとくる人が多いのではないだろうか。ハガキ職人、と呼んでしまうとなんだか「それでいいのか…

文学フリマ『僕の休日は誰かの平日』の感想

今年は現地まで足を運ぶことは叶わなかったが、親切な友人が欲しいものがあれば購入して送ってくれるというので2冊だけ依頼した。昨年と一昨年は仕事の合間を見て東京まで出掛けたのだが、実家で暇を持て余す身である今年になって遊びに行けないというのも…

霜月でこれなら師走は

厳密にはまだ終わっていないのだが、とにかく今月は忙しかった。無職であるがゆえに会社や仕事に逃げられないという種類の忙しさが存在すると身に染みた一ヶ月だった。少し落ち着いたので備忘録を兼ねて少し纏めておく。 月初めに採用試験を受けていた某所か…

柿の木

酒を飲んだ叔父を家まで送ることになった。昼前に始まった葬儀の終わりに設けられた酒席だったのでお開きになった時間は比較的早かったが、晩秋を迎えた外は十分に暗くなっていた。この叔父は長く病院に勤めていた人で、いかにも田舎の百姓めいた親戚一同に…

シン・ゴジラを観たので

以下、作品の内容全般に触れますのでネタバレ等を気にされる方はご注意ください。 『シン・ゴジラ』のCMを最初に目にしたのは、ガルパンの劇場版を観るために映画館に足を運んだときだった。上映前に流れる宣伝の中に『シン・ゴジラ』があった。その紹介映像…

生と死のぐるぐる

もう15年くらい前になる。長く寝たきり生活をしていた曽祖母が家で息を引き取った。完全無欠の老衰だった。この文章を打っているMacBookの乗った机のある場所がまさに、曽祖母の亡くなったベッドがあったところだ。いまはその八畳間が私の部屋になっている…

ゲームのトラウマ、という感覚

Twitter上にて「おまえらのゲームのトラウマ挙げてけ」というハッシュタグを見掛けて、つい反応してしまった。 ストーリー上でショッキングなシーンとして印象的だったのは『かまいたちの夜』で真理を階段から突き落としてしまうバッドエンドと、『ゼノギア…

推理小説の読み方

ミステリーに触れたのは漫画『金田一少年の事件簿』が最初だった。小学4年生くらいだったか、何気なく立ち読みして「ははあ、こういう物語があるのか」と目を丸くした。当時の私はミステリーというのは大人が読む物、頭の良い人が嗜む物、と考えていたので…

プレステの『MOON』てゲームを知ってるかい?

発売は98年だったか。ゲーム雑誌を読んでいて、その世界観に真っ先に惚れ込んだのは弟だった。可愛らしくポップ、それでいてどこか儚さを感じさせるパステルカラーの色使いと開発画面の写真を眺めているだけでも、他のソフトとは違うセンスの良さが溢れ出…

自然な演技は難しい

以前から主張していることなのだが、映画の吹き替えやアニメの声優に本職でない人間が出て来るのがものすごく気に入らない。特にジブリが。 物心ついた頃からジブリ作品を敬愛しファンタジー世界の歩き方の教科書にして生きてきた私だが、その点に関してだけ…

頭の中にいるイケメンはどこから来るのか

他人の頭の中は覗きようがないが、私は小説を読んでいるときに物語が映像として脳内で再生されている。あなたもそんなフシはないだろうか。なかったらごめんなさい。話は終わりだ。 それは文章に沿って一方通行的に起こっているわけではなく、ある程度キリの…

▶︎さいしょからはじめる

こんにちは。エキサイトブログから引っ越してきました。よろしくね。 以後、文語体。 大学生時代にブログサービスが流行り出した頃から使っていたのだが、最近になって使ってみたら、重い・エラー出る・投稿画面の文字小さい、の三重苦だったので見切りをつ…

花火:8月28日の10分雑記と考察

盆休みに高校時代からの友人と花火を観に出かけた。いつも長い休みの取れるときには酒を飲みに集まるのだが、今年は都合の付く人数が多かったこともあって例年以上に楽しめた。グッジョブ、番長。本当に楽しかったです。久しぶりにレジャーシートを敷いて見…

老化:8月27日の10分雑記と考察

3回目。表題にテーマを簡単に書くことにした。後から自分で見返すときに便利そうなので。ちなみにブログにアップする日とタイトルの日付が1日ずれているのは、原文を一晩寝かせてからこの考察を書いているためだ。この考察も前2回はそこそこ時間を掛けて…

ドラクエ:8月26日の10分雑記と考察

2回目にしてスタイル変更。考察を先に書いて、後に原文を載せることにした。なぜなら原文は酷すぎるから。面白いものを書こうという試みではないものの世間一般に向けている以上、最低限の体裁は整える必要があろう。そして今回、2回目にしてドラクエの悪…

ライティング・マラソン:8月25日の10分雑記と考察

10分間雑記を今日から少しずつ始める。これは時間を区切ってとにかく考えたこと思ったことをひたすらタイプしていく物だ。これにより自分の思考をタイプする速度、技術、そして何よりその中身を鍛える。これはこうして打ちまくるだけでバックキーを押さない…

さよならのまち

大学進学と共に15年間暮らしてきた新潟をあと数時間で去る。絶対片付かないだろ、隕石のひとつも落ちてくれと思っていた部屋もいまはこのMacBookとルーター、手荷物の入った鞄、出るときに捨てていくつもりのゴミ袋が4つあるばかり。がらんとしていてなにか…

無職三日会わざれば

無職になって三日が経った。相変わらず引っ越しに向けた片付けはあまり進んでいない。というのも部屋が不要物だらけであるため次々と捨てないことには片付かないのだが、土日はゴミの回収がないために先の二日は作業があまり進まなかったのだ。もちろんそれ…